日本vsボスニア

昨日見てしまったフットボールゲーム第一弾
 
前半
雨(雪)が降ってぬかるむピッチコンディションの中、日本代表は結構がんばったと思う。体力なしの小技サッカーをする日本にとって、ボールコントロールがうまくできないピッチは何より最大の敵。こんなコンディションには悪い記憶がたくさん結びついている。2001年のサンドニでフランスに5−0敗北したのもこんなコンディションだったよな(有名な「サンドニの屈辱」)、とか。このコンディションで、ワールドカップ予選でスペイン相手に一応2回引き分けているボスニア相手に優勢に試合を展開できたのだから、一応及第点だろうと思う。

後半
問題は後半。間違いなく監督の指示だろうが、ハーフタイム直後からボスニアは日本の左サイド(アレックスのサイド)を集中的に攻め始める。後半開始から5分間で左サイドを4回突破される。ほぼ1分に一回である。しかも、その一回は意図的にまず右サイドにボールを展開し、ディフェンスが右に集中し左サイドがアレックス一人になったところでサイドチェンジ、そして簡単にアレックスを振り切りシュート、である。その後もこのアタックが執拗に続く。後半だけで左サイド突破は14回で3分強に一回!(数えていて途中からいやになった。)試合直後からアレックスのプレーに批判が続出していたが、これはしょうがないというのが第一印象。

この批判を意識して、アレックスはインタビューで「数的優位を作られたことが問題(だから自分一人の問題ではない)」といったことを言っている。確かにそれも一理ある。多くの場面でアレックスは一人だった。1対1の場面を作られてしまうこと自体問題だ。オランダの指導者が10歳くらいの子供に対して、どうやって相手のボールを奪うかをミニゲームをしつつパターン化して延々と、繰り返し繰り返し教える場面をTVで見たことがあるが、日本の選手はこういう訓練をきっちりしていないのだろう(どんなシステムもそれを選手が実践してこそだだという言葉も印象的だった)。ぜんぜん組織だった守備ができない日本のサッカーを見ているとそう思わざるをえない。

でもアレックスの責任がこれで解除されるわけではない。そもそも、アレックスは守備における相手との距離の取り方、プレスのかけ方が分かっていない、その典型だ(ブラジル人守備嫌いだからな)。ただでさえバランスが崩れやすく、そしてその分個人の運動量、パワーが要求される4バックなのに、ほんとに相手プレイヤーを見てるだけ。簡単に抜かれて、すっぽんすっぽんセンタリングをあげられてしまう。いくら数的不利な状況であってもこれはないだろう。アレックスは数的に有利な状況でも見てるだけなのだからどうしようもない。

アレックスが一人では何もできないのでどうしてもいつでもどこでも宮本がケアに出て行かざるをえない。結果として、それほど体力があるわけではない宮本の運動量は増え、バランスは崩れやすくなる。宮本はつねづね4バックを問題視しているが、この試合を見ていると、これははっきり言えばアレックスの守備に問題があるということではないかとさえ思えてしまう。まったく立ったまま、見てるだけのアレックスの横で、必死に動き回りスライディングしている宮本が可哀想になった。いずれにせよ、4バックでこの守備のままでは相手チームは間違いなくサイドを徹底的に攻めてくる。こんな4バックではアルゼンチンに勝ってしまった)クロアチアはもちろん、イングランド仕込みのサイド攻撃が大得意のオーストラリアにも負けるだろうと思う(オーストラリアのキューエルリヴァプールの左サイドで加持とのマッチアップとなるが、あの突破を止めるのはさぞ大変だろう)。

宮本がアレックスのカバーに回るため、最終ラインのバランスが崩れる。1点目の失点は左サイドからのものではないが、宮本が左に流れて右が手薄になったところをボスニアフォワードに突破され中澤が後ろから引っかけてPK、というもの。このファールはほとんどシミュレーションだが突破されて後ろからいったものだから、PKを取られても文句は言えない。2点目は、左サイドを突破→アレックスが体で止めてファール→フリーキックボスニアフォワードの頭にあわせられ→これを川口がファンブル→失点。こう書くとわかるが少なくとも二つ(フォワードの前に体を入れられなかったことも含めると三つ)ミスが重なっており、これじゃ点を取られてもしょうがない。

さて、逆転されてジーコは福西+小笠原を小野+稲本にチェンジ。これは攻撃的にしたいのか単なるオプションを試したいだけなのか分からない。その後の日本のプレーが前がかりになるのをみると、その両方なのだろうか?いずれにせよ、これがかえってバランスを崩す結果となる。バランスが崩れ気味の最終ラインだからどうしても中盤からのサポートは不可欠。これをこなしていたのが福西。福西は時に最終ラインの中に入り、そして中田とともに前線への中継ぎ役になっていた。ところが、変わって入った小野、稲本は二人とも最終ラインのケアをせず前がかり(小野に至っては試合勘が戻っていないせいか、ぜんぜんボールに触れることもできない)。従って、最終ラインはなおさらバランスが崩れ、しかも中盤との距離も開いて、空いたスペースを自由に動き回られるようになり、その上悪コンディションも重なって最終ラインから中盤へのパスの供給もしばしばカットされる(中澤、宮本にプレイヤーの間を通すようなロングボール(と言っても、そんなにロングじゃないんだけどね)のパスは期待できないというのも問題だよな)…といった具合で、もうガタガタ。システムも何もあったもんじゃない。これが最後まで続く。

何でこんなに修正能力がないのかつくづく疑問だ。力がないからと言ってしまえばその通りなのだろうが、それじゃ話が終わってしまう。あえて言えば、(中田がよく言う)コミュニケーションの欠如の問題ってやつだろうか?前韓国監督で、現オーストラリア監督兼PSV監督ヒディングは東アジアのサッカーの問題は、選手間に上下関係の序列があってコミュニケーションが阻害されていることだと言っているが、思わずこの単純な文化論を信じたくなってしまったよ。最後に、中村のピンポイントフィード→中田のヘッド→得点、とどうにか同点としたが、負けた方が危機感が出てよかったんじゃないか。

結論;ワールドカップはあんまし期待しないこと。