7月9日 イタリアvsフランス

1−1(延長0−0)PK5−3。1ゲームの中で色々な局面があり、色々な事件がある波瀾万丈のゲームだった。イタリアはその初戦(対ガーナ戦)を見たときから優勝候補筆頭と思っていた(http://d.hatena.ne.jp/Zephyrus/20060616)が、イタリアは本当に優勝に値するチームだと思う。WCに優勝するということはどういうことか学習させてもらった。


前半、まだ試合も落ちつかない5分、マルーダがペナリティエリア内でマテラッツィに倒されいきなりPK。(あまりこういうことは言いたくないが、これは明らかにマルーダのシミュレーションだ。マテラッツィマルーダに触っていない。こういうのがあるから、C.ロナウドのシミュレーションなどかわいらしいと言うのだ。でも、その後、後半マルーダは本当にPKもののタックルを受けてもファウルを取ってもらえなかった。審判もハーフタイムにビデオを見て勉強したのだろう。)このPKをジダンがチップキックで決めてあっさりフランス先制。両チームとも堅い守備陣を持っているので先制点を取った方が絶対有利と思っていたので何か拍子抜け。

だが、その後のイタリアの猛攻はすごかった。フランス相手に中盤をほぼ支配する(前半のイタリアのボール支配率は60%!)。ここで見せたイタリアの技術は本当に凄かった。個人の技術もとんでもないが、チームとしての技術がとんでもない。いったいどのくらい、どのようなチーム戦術の練習を積んだんだろうか?20分ごろ、ピルロが蹴った右からのコーナーをマテラッツィが高い打点でやや背中を反らせながらもヘッドでゴールにたたき込むが、このゴールはイタリアの気迫にフランスDFが負けたというような印象があった。その後も、ピルロがコーナー、フリーキックを蹴るたびに得点の予感がしたが、30分過ぎには、鉄壁のフランス最終ラインをガットゥーゾトッティ、トーニの3人が1m四方位の空間の中で本当に細かいパスをガットゥーゾトッティガットゥーゾ→トーニとつないで突破!(フランスのすでに引いた最終ラインが正面からパスワークで突破されるのを初めて見た気がする)、トーニがシュートまで持ってゆく(テュラムがスライディングでなんとかブロックしたが)。とにかく前半はイタリアの攻撃が際だっていた。


後半、イタリアは一転して守備的な戦術を取る。前半の運動量はいずれ維持できなくなる、ならば最初から守備的にしてカウンターをねらう戦術を意識的に取ったほうがよい、というわけだろう。しかも、リッピは後半いきなり選手交代をしない。あくまで、選手交代は、スタメンで‘専守防衛+カウンター’的な戦いをした場合の修正点を見極めてから。で、計ったように後半15分過ぎ、ボールにあまり絡めないトッティ+ペロッタに代えてイアキンタデロッシを投入。リッピはこの交代で守備と攻撃(カウンター)のバランスを取ろうとしたのだと思うが、守備はともかく攻撃はフランス守備が堅いせいでそれほど活性化しなかったのはリッピの誤算か?

いずれにせよ、フランスはイタリアのこの戦術的転換により俄然中盤を支配するようになる。この局面で、たびたびアンリが個人技でイタリア守備組織を突破する。これも見物だった。アンリはスペイン戦あたりまで最前線に張っていたのだが、その後中盤から前線を自由に動き回るようになる。最初からこうすべきだったのだ(http://d.hatena.ne.jp/Zephyrus/20060630)。そのスピード、フィジカル、技術、どれをとってもアンリはフランス攻撃陣の中で突出していた。ここでアンリが一点取っていれば試合は決まったのだが・・・。(アンリとしてはやはり不完全燃焼という意識が強いだろうなぁ。)

その後も、フランスが攻め続けるも得点できず、他方イタリアもカウンターをねらうがフランスの守備組織に阻まれ続ける。フランスがもっと前線に人間を送り込み前がかりにすればフランスに得点が入るかもしれない、だがそうすれば組織バランスが崩れ一瞬の隙をつかれて逆にイタリアのカウンターが決まるかもしれない――後半25分過ぎあたりから試合が終わるまで、この戦術的心理戦といった局面が延々と続く。ゲーム最終盤の延長後半、ジダンマテラッツィに頭突きを食らわせてレッドカードとなるが、これはこの心理戦にいらだった結果であるように思えてしょうがない。こういう戦いをジダンは何度もしてきただろうに、‘らしくない’としか言えない。


PKとなって多くのイタリアファンの頭には94年アメリカ大会のボールをふかしてうなだれるバッジオの後ろ姿が思い浮かんだことだろうが、今回うなだれることになったのはトレゼゲだった。(ベンチを温め続けたその最後にこの結果。トレゼゲはさぞつらいだろう。)