カルフール狭山

夕方から高速を利用して狭山市にある巨大スーパー、カルフールに久しぶりに行った。日曜夕方で大渋滞している上り線を横目に関越を走り、川越インターから国道16号に入って八王子方向に走ること15分、中村橋から45分ほどで到着。

カルフールは当然フランス資本のメガ・スーパーだが、昨年資本は撤退し今は日本のイオン資本になってしまった。開店当初はフランスの珍しい食材他、ちょっと普通のスーパーでは見られない商品が大量に所狭しと並べられていたのだが、業績の悪化に伴って売れ筋商品だけを置く普通のスーパーに成り下がってしまった。しかし、日本資本となった今も、ワインの品揃えと値段の安さは都心ターミナルのデパートに勝るとも劣らず、特にナチュラル・チーズに関しては私の知る限り(開店当初よりは落ちたとは言え)その商品の量、質、安さでどんなチーズ販売店の追随をも許さないレベルにある。例えば吉祥寺ロンロン内とかにある‘チーズ王国’は中央線沿線でチーズを買う際の定番の店だろうが、カルフールのチーズは量、質、値段いずれをとってもチーズ王国など目ではない。また、新宿伊勢丹のチーズは質ではカルフールに並ぶかもしれないが、量、そしてとりわけ値段で負ける。カルフールのチーズは特に開店当初は本当に、‘フランス人のチーズに対するこだわりを見よ’という気合いが感じられるほど美味でその上安かった。チーズ王国にしろたいていの店は‘食べ頃’を外した(つまり熟成していない、熟成しすぎの)商品を売っているが、カルフールのチーズはまさに食べ頃のものしかない。今回行ったのも、ほとんどワインとチーズのため。しかも、食材はもちろん、家電から衣料品他何でもあるので、一店回ればあらかたの生活必需品が揃ってしまうという便利さもある。半年に1回くらい来てもいいかな。

それにしても、カルフールの開店から撤退までの一連の変化は、フランスの家庭消費生活と日本のそれとの質の違いを実感させるものだった。日本化したカルフールの商品の種類の少なさ、質の低さは、そのまま日本の基本的な家庭生活の低質さを反映しているようだ。開店当初売られていたフランスパンはもとよりデニッシュは吉祥寺あたりのどの専門パン屋も勝てないものだった。なぜ専門パン屋がフランス大衆スーパー内で焼いているパンに勝てないのか不思議としか言いようがなかった。チーズなどこれまた安いので有名なチーズ王国よりもさらに3〜4割引の水準で、しかもより美味しいときては、いったい日本人が普通に食べているものはいったい何かという気になったものだ。フランスやドイツは大体4人家族で週に4〜5万円ほど食費をかけると言われているが、日本人は週2〜3万円でしかない。日本人は食生活に金をかけないのだろう。食生活に限らない。日本人は家具にも金をかけないので有名だが、いったい日本人は何に金をかけているのだろうと不思議になってくる。やはり車、ブランド製品といったところか?(日本人は四畳半に住んで行列してヴィトンのバッグを買うとか、日本人は自分の家にいるときは安い2万円のソファや2千円の座椅子に座っているのに、車のこととなるとシートは本革でなけりゃとか言い出す不思議な民族だとは、よく言われる話。)また、住居費が高くて生活にまで金が回らないという事情もあるのかもしれない。狭いちんけな家に住みベンツに乗って吉野屋に行くという生活はまったく豊かと言えないと思うのだが、どうもこれが日本人の基本なのだろう。フランスでは大衆的なカルフールの水準は日本の大衆の水準ではないということだ。この点を踏まえてカルフールは出店するとき立地をよほど考えるべきだったのだろう。こう言ってはなんだが、狭山はないだろう、狭山は。大規模店を出す土地がないと言っても、せめて練馬の大泉、調布の仙川あたりに出店するべきだった。店舗規模を落としても大泉、仙川あたりに出店していれば成功したのではないか、もっと気軽に世界中の色々な珍しい食材を食べられたのにと残念でならない。