今月のフットボール

今月は色々な大会があり色々考えることがあった。

A
衝撃的だったのは、カナダで行われたU20-WCにおける日本のパフォーマンス!日本のフットボールはとうとうここまで来たか、と見て感慨深かった。人もボールも動く。そして、速度がある。しかも、体力もある。U20代表を見ると、現フル代表の中村の世代はボールテクニック優先、スピードは二の次、体力、走力は三の次だったのだと思い知らされる。日本の未来は明るい。惜しむらくは、守備がもう一つ弱い。これさえあれば、チェコにも負けなかっただろうと悔やまれる。

B
コパ・アメリカ決勝でのブラジルは、ヨーロッパのスター選手をほぼすべて欠きながら、オールスターのアルゼンチンを圧倒し、3-0。驚いたのは、ブラジルがイタリアのようなフットボールをしていたこと。ブラジルは守備において、DF4枚とMF4枚が実に有機的な守備を展開し、アルゼンチンをまったくペナルティエリアに侵入させない。そして、アルゼンチンが前がかりになったところでカウンター。ブラジルがカウンターで3点中2点!である。ブラジルは決勝まで苦戦したらしいが、信じられない。これに対してアルゼンチンの守備はまったくお粗末だった。DFとMFの距離が開いており、そのエリアにボールが出ると、もう目の前にはDF一人しかいないという状況が頻発。これじゃ、勝てるわけないよ。

C
アジア・カップは、日本フル代表にとって、オーストラリアに形はどうであれ勝つためにだけあった。再びオーストラリアに負けていたら日本は再起不能になったのではないか?オーストラリアに勝って日本のアジアカップは終わった。

アジアカップは日本の現状を知るいい機会になったと思う。

1;以前にも言ったことだがhttp://d.hatena.ne.jp/Zephyrus/20070325、日本のパスワークはかつてに比べれば随分スピーディかつセンスにあふれたものになったとは思う。だが、この程度の速度、センスだけではアジアレベルでも勝つことはできないということがよくわかったと思う。日本のパスワークは、オーストラリアにしろサウジにしろまったく崩すことができなかった。

得点するためには。現在のパスワークにプラスアルファする要素が絶対必要だ。前に進む(ディフェンダーの裏へ飛び込む)今以上の足の速さとか、相手ディフェンダーに脅威となるようなドリブルとか、2枚のセンターバックをボールウォッチャーとしてしまえる、正確で速いアーリークロスとか・・・。日本にはどれもないし、今のフル代表がこれから身につけられるようなものでもない。日本の武器はセットプレーからのフリーキックコーナーキック)だけではないか?オーストラリア戦では高原の個人技で得点したが、サウジ戦は得点はすべてコーナーキックがらみで、二人のセンターバックが得点者。考えさせられる。(攻撃時の駒野は何とかならないのか?縦のスピードもなく、クロスのスピードも精度もない。駒野のヘロヘロのクロスは、得点の予感がまったくしない。サイドバックの人材不足は深刻だと思う。)

2;信じがたいことだが、日本は世界の趨勢に反してポゼッションフットボールを目指している。日本の理想は華麗なパス回しで相手を翻弄して、相手にボールを渡すことなく得点することである。日本の理想はバルサか!?と思うが、何のことはない、日本の場合、これは実は守備が弱いことの裏返しでしかない。対戦国はこの日本の事情をよく知っている。だから、オーストラリアもサウジもカウンター狙いできた。日本のお粗末な守備は前がかり状態からのカウンターに実にあっけなく崩される。

印象的だったのは、サウジの3点目。これは、カウンターでサイドに侵入したプレイヤーが決めたものだが、この場面、サイドからゴールに迫ろうとするサウジのプレイヤーから見て前にはまだ阿部、やや右に中澤の二枚のCBがいた。位置関係はエンドライン側から阿部、中澤。この二人の距離は十分狭く、TV画面を見ている人間にも、サウジプレイヤーはエンドライン側のスペース(つまり、阿部の右のスペース)に出るしかなく、当然阿部にもそれは予想できると思われ、したがってこの程度の侵入はどうってことないと思われた。ところがぁ!、阿部はサウジ・プレイヤーの左への(つまり阿部と中澤との間を突破しようとする)フェイントにあっけなくひっかかる。中澤はこれを読んでエンドライン側のスペースを埋めようとするのだが、フェイントに引っかかって体重を左にかけバランスを崩してしまった阿部が中澤をブロックする形になって右に行けない・・・。これでもうサウジプレイヤーはキーパー川口と1対1、そして、3点目である。NHK衛星のアナウンサーはサウジプレイヤーの「個人技による得点!」と言っていたが、これは阿部のミスと言うべきだろう。

今やブラジルですら守備を固めてカウンターをねらう時代というのに、日本のこの方向性はこれでいいのか?激しく疑問だ。まあ、やっとどうにかこうにかパスワークができるようになったのが日本の現状で、守備にまで手が回りませんと言われたらそれまでなのかもしれないが、パスワークだけでは得点することができず、カウンターには耐えられませんというのでは勝つことができまい。相手の攻撃に耐えられる守備の構築は現代フットボールの基本命題ではないか?日本代表は攻撃(ボールポゼッション)重視のメンバー構成になってはいないか?以前も言ったhttp://d.hatena.ne.jp/Zephyrus/20070407が、攻撃スピードの追求は守備の追求と表裏だ。攻撃スピードだけ追求しても決して勝てない。韓国との三位決定戦がまだ残っているが、勝てるか疑問だ。

3(おまけ);アジアカップの審判はどうなってるんだ?日本vsオーストラリアの主審も訳分からなかったが、日本対サウジの主審も訳分からない。高原がヒジ打ち(?)でイエローカードだし、最後も日本のコーナーキックとなったところで試合終了。審判をちゃんと評価する制度が必要だ。