Germany vs England (Round of 16)

Germany
* Miroslav KLOSE (20')
* Lukas PODOLSKI (32')
* Thomas MUELLER (67', 70')
4:1 (2:1)
England
* Matt UPSON (37')GER: ENG - Matt UPSON
Match 51 - Round of 16 - 27 June
1次リーグを見る限り、今のイングランドではドイツに勝てないだろうとは誰でも思う。だから結果は予想通りなのだが、露骨なジャッジミスのせいで非常に後味の悪いゲームになってしまった。ランパードの得点が認められていれば前半2-2。後半イングランドは落ち着いて攻撃することが出来たはずで、まったく違った展開になった可能性もある。

だが、自分がレフリーになったつもりのランパードにはがっかりした。ドイツの3点目はランパードフリーキックをドイツの壁が弾いたところから始まっているのだが、ランパードはドイツDFのハンドを両手を挙げてアピールして勝手に足を止めてしまう。ランパードはこれ以外にも何度もファウルをアピールして足を止めてしまうことがこのゲームの中であった。何様のつもりなのだろう?

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当然ことだが、イングランドでは大騒ぎ。メディアは、1 次リーグ不調で延々と、アディダス公式球であるジャブラニ・バッシングをしていたが、今や辞任の時だとカペッロ・バッシングの嵐である。無論、誤審を犯したレフリー・バッシングもある。「祭り」である。祭りの中では「何で我々はこんなにイングランド代表に期待してしまうのか?」なんてコメンテーターが延々と語っていたりする。バカ。「おまいらメディア、コメンテーター、評論家punditがあーだ、こーだと語るからだろ」と言いたくなる。

恐らくイングランド代表監督は二つの選択肢にさらされるのだろう。プレミア各チームで活躍する花形を集めたオールスターチームを作るか、自分が本当に機能すると信ずるチームを作るか。後者を取ることは非常にリスクが大きい。ポジジョンがかぶる花形の誰かを代表招集しないどころか、先発落ちさせるだけで恐らくメディアは非難の大合唱。それでも勝てればまだいいが、負ければ「言った通り、見たことか」でさらなる非難の大合唱となるのは目に見えている。前者を取った場合、チームが機能せず勝てなかったとしても、それは監督だけの責任ではなくメディアの責任でもあるから、監督はそれほどの非難に晒されずにすむ。となれば、人間誰だって後者を選ぶ。で、イングランドは各プレイヤーのポジション、能力がどれほどかぶってもオールスター軍団である。これだけのスターが揃えば、向うところ敵なしっ!・・・で、また「祭り」。

イングランド・プレミア・リーグの成功がイングランド人プレイヤーの減少をもたらし代表の弱体化をもたらした、あるいはその成功が代表プレイヤーのやる気を減退させ代表の弱体化をもたらしたなどとも言われるが、違う気がする。むしろ、プレミア・リーグの成功はフットボールのスター・システムをもたらしたのだと思う(その頂点に今も君臨するのは、単なるフットボーラーの枠を超越した存在となったベッカム)。イングランド代表はいわば、出演者全員がイケメン俳優のハリウッド映画に似ている。主演者の年俸総額は1億ポンド! 監督の年俸だって600万ポンド! 最近のイングランドの弱体化は、イケメン俳優だけ集めても映画は撮れないということに類比されるべきなのだと思う。

恐らく、カペッロが目指したのは、全員イケメンのオールスター・チームを作るしかない以上、イケメンにプライドを捨てて泥臭い仕事をさせる、ということだったのだろうと思う。だから、チーム・コンセプトは「献身(自己犠牲)」。ベンチに座るベッカムはこのコンセプトを象徴する存在だった(http://d.hatena.ne.jp/Zephyrus/20090913)。毒をもって毒を制する。こう考えれば、ベッカムが3月14日アキレス腱を断裂して代表を外れるのと同時に、イングランドが不調の坂を転げ落ちてゆく(典型的には対日本戦)のも分かるではないか! だから、自分がレフリーの判定を決定できるかのようなランパードの傲慢な態度こそ、イングランドの不調をもたらした元凶そのものと考えるべきなのだ。これは判定にテクノロジーを導入するかどうかなどという問題ではない。フットボールの神はこんな傲慢を許すはずがないということだ。

イングランドの監督は自らの責任において、機能するチームのための人選をする必要がある。しかし、カペッロのカリスマをもってしても出来なかったことを誰が出来るか? もはや世界規模に膨れあがったプレミアのスター・システムが産み出す富は莫大だ。その富に群がる人間はメディア関係者も含めて皆、そんなことを許すはずがない。個人で巨大システムに対抗できるはずがない。だが、オールスターを招集しつつ、彼らをさらに超越するスターによって彼らをコントロールする、毒をもって毒を制するというコンセプトももうこれ以後不可能だ。ベッカムはいなくなる。イングランド代表はシステムの宣伝機能を、そこそこ勝つことでそして華々しく負けることで果たしてゆくのだろう。宣伝のサブシステムとしての代表。その役割は野球(WBC)におけるアメリカ代表に似ている。この未来はフットボールが巨大資本化したその結果として不可避なのだろうが、イングランドフットボールファンにとっては、少しつらいことなのかもしれない。