Argentina vs Germany

Argentina
0:4 (0:1)
Germany
* Thomas MUELLER (3')A
* Miroslav KLOSE (68', 89')
* Arne FRIEDRICH (74')
Match 59 - Quarter-finals - 03 July


オーナー・マラドーナの趣味チーム、アルゼンチンがドン・キホーテのように華々しく散った。


アルゼンチン
・アルゼンチンはどれほどドイツに押されようが(特に前半30分まで)、カウンターをかけられようが(特に後半)、4-3-3を崩さず、DF×4+MF×3だけで守備をしようとしていた。驚いた。
・先にも言った通り(http://d.hatena.ne.jp/Zephyrus/20100613)、アルゼンチンは純粋FWを3枚も前線に並べており(イグアイン、メッシ、テベス)、どうしても中盤が手薄になる。その上、SBも守備という点ではそれほど優秀とは言いがたい(CL優勝チーム・インテルサネッティカンビアッソというDF、MFが代表落ちしていることからしても分かるが、マラドーナの代表選抜基準は何しろ「攻撃的である」ことなのだろう)。
・ドイツがこうしたアルゼンチン守備の弱点を突いてきているのは明らかだった。中盤サイドで仕掛けて守備陣を引き寄せた後サイドチェンジしてスペースを利用する。あるいは、やはり中盤サイドで仕掛けてSB を引き出した後その裏のスペースを利用する。
・ところが、アルゼンチンFW3枚はこれを見てるだけである。イグアイン、メッシはともかく、テベスなどプレミアでは中盤のハードな守備もするのに、アルゼンチンのテベスは別人。多くのクラブチームでFWの人間も中盤は無論、最終ラインに入っての守備を求められ、8枚による守備は当然、下手すると9枚での守備が普通の光景になっている現代のフットボールにおいて(このゲームのドイツはまさにそうだった)、アルゼンチンのそれはかなり異様に見えた。もしかしたら、アルゼンチンは、ドイツごときの攻撃、7枚で十分対処できるという自信があったのだろうか? まさか。現実にはそうはなっていなかったのだから。アルゼンチンはより攻撃することで、攻撃し続けることで、ドイツの攻撃を押さえ込めると思っていたのだろう。
・攻撃は最大の防御なり。確かに前半30分過ぎからアルゼンチンは中盤でのポゼッション率を上げてゆく。しかし、その攻撃が延々とドイツ DFを崩せずはね返され続けても、メッシがまったく自由になれなくても、まともなシュートがまったく打てなくても、他方ドイツのカウンターで守備が崩壊しそうになっても、実際崩壊しても、そして最終盤、組織的な攻撃すらできず自陣のなかでMFやDFが繰り返しドリブルをするハメになっても、アルゼンチンは同じことを繰り返し続けた。
・あまりの戦術のなさ。というより、「他に生きる道はない」というかのような頑なさ。なんて不器用な! このゲームをマラドーナの人生に重ね合わせないフットボール・ファンがいるだろうか? どこまでも攻撃的な人生、そしてどこまでも攻撃的なフットボール・・・。


ドイツ
・ドイツは、フランス、イタリアが世代交代に失敗したのに対して、「一つの幸運」のおかげで、劇的に世代交代に成功した。一つの幸運とは言うまでもなく33歳のバラックの負傷。監督レーヴは天の配剤を感じたに違いない。バラックの背番号13を背負うミュラーはなんと20歳。バラックに代わる新しいゲームメーカーであるエジルは21歳。しかもそのミュラーエジルが大ブレーク。今や、バラックフリンクスが中盤にドンと構え、パワフルではあるがどこか素朴、粗雑なドイツは過去のものである。パワフルな上に、スピーディーで技巧的でもあるカウンターのドイツ。驚くべき変貌。それは新しいトータル・フットボールの出現をすら予感させる。’Clock-Work Deutschland’! アルゼンチンが巨大な最新鋭マシンに突撃する古風な騎士のように見えたのは、このせいでもあるのだろう。