ある病院にて

地域の急性期医療を担うある中核病院の看護部長に、今年の4月サプライズ人事で病院外から抜擢された、昔からの友人(看護師/看護教員)に、その職場である病院内、秘書に「こちらで」と案内された応接室で久しぶりに会う。

典型的な大企業病に冒された病院に単身乗り込んで、その組織改革を行うことになってしまった彼女は、どうやら着々とそのミッションを遂行しているようだった。部下となる師長10名余、看護師400人余――。話を聞いただけでも胃が痛くなりそうな状況を、「大変ですよ」と言いながらも笑って話す。

まったく医療、特に看護の現場にいる人間のがんばりは半端ない。夕食食べながら寝落ちしたとか、その激務ぶりを語る逸話には事欠かない。彼女も忙しい時は睡眠時間2時間が続くとか、家で仕事しながら寝落ちの兆候が出たところでベッドに入るのが日課とか言う。社会学者なんてぬるい仕事だと思う。耳が痛い。

彼女は、院長が理想主義者で困るとこぼす。抽象的な理念だけを振り回す人間は困りものなのだろう。彼女は理想主義者ではない。細部までデザインされた素晴らしい理念を語る訳ではない。しかし、こうあるべきという大まかなビジョンを持ち、それに照らして、自分がいる今ここで最適な行動は何かを具体的に考え、それを一つずつステップを踏んで全力で実現するという能力はずば抜けている。最良のプラグマティストに属する人間である彼女と話していると、美しい理念よりも着実な実践の重要性を諭されているようだ。耳が痛すぎる。




帰り際「今度、インタビューさせて」と言うと、「いつでも。私が倫理委員会通しますよ(笑)」って・・・そんな権力いつの間に?