ニコラス・ローズ『生そのものの政治学』

一応原書も読んでいるのだが、訳書を再読。
ただ、翻訳がいろいろとアレで・・・。

1;「優生」を「優性」と誤変換(誤植)。何度も出てくる。これはまずいでしょう。

2;原文「twenty century」を「19世紀」って・・・どうしてこんなミスが。

3;「看護士」じゃなくて「看護師」でしょう。

4;「epidemiological」を「epistemological」と誤認。「疫学的」が「認識論的」に・・・。

5;人種に関する議論の中に現れる「Caucasians」が「コーカサス人」。しかも、「コーカサス人」で統一されているわけでもなく、「カフカス人」としているところも。

6;「surrogate;代理」を「表象」となぜ訳しますか?

7;「genetic variation;遺伝学的変異」が「遺伝学的変数」。「variation」を「variable」と混同?

8;「the+形容詞」を完全名詞化する箇所多数。例えば「the somatic」を「ソーマ」。「ソーマ的なるもの」と「ソーマ」ではニュアンスが違うでしょう? さらに「the “bio”」を「ビオス」ってしたらぜんぜん違うでしょう。


おまけ
監訳者が以下のように書いてます。

ニコラス・ローズが、脳にかんする書物も含め、かなり意識的にこうしたポストヒューマン社会の姿を具体的に浮かびあがらせようとしていることは、少なくみつもっても現在必要な試みであることは間違いがないだろう。p493f

「少なくみつもっても」・・・ですか。あの〜、ローズは本書で“何度も”次のように書いてるんですけど。

I hope that I have managed to show that the speculation about our move into a “posthuman future” is overblown, as are many of the worries associated with it.p253
「ポスト・ヒューマンの未来」に進んでいくわれわれの動きについての考察がおおげさなものであること、そしてそれと関連した心配の多くもまたおおげさなものであることを何とか示すことができていれば幸いである。p473

こうして、ローズの願いも虚しく、ポストヒューマンが語られ続けるのであった。(脱力感、パネー。)