覆水盆に返らず

印刷物は一度出版されてしまえば、もう元に戻すことは出来ません。なので、原稿の誤字脱字は相当しっかりチェックしているつもりです。校正があればかなり時間をかけてしっかりやってます。

でも、やってしまうのが、誤字ですよね。



これまでで最大のミスと思っているのは、ある論文の英字タイトルで・・・(略)・・・。もちろん、英文タイトルなんでしっかり校正しなかったということもあるんですけど、論文書いているとき、音読みするクセがついていたからなんですね。例えば、「(吉本)隆明」を「りゅうめい」と言ったりするでしょう。あれと同じです。

人名は難しいですね。平塚らいてふ(現代語表記では「らいてう」)は「雷鳥」と漢字で書くと基本ダメです。本人が「ひらがなのやさしい感じが好きで、ひらがなにした」って言ってますから。(でも、初出で「雷鳥」となってるのもあって、面倒くさい。)蓮實重彦は、「蓮実」と書いてある自分宛の郵便物は一切開かないと(どこかで)言ってましたが、斉藤、斎藤、齋藤、齊籐といった各種のさいとうさんたちは、どうなさっているのでしょう。書く側としては、緊張のあまり、いっそ「はすみ」も「さいとう」もみんな、参考文献に入れないという選択をしそうです。




生殖医療には「じゅせい」という言葉が、「授精」と「受精」、二種類あります。簡単に言うと、授精inseminationは精子卵子が結合するアクション、受精fertilizationは(授精の結果)精子卵子が結合した状態です。(恐らく翻訳語でしょうが、どうしてこんな熟語作成をしたんでしょう?)

これに別の熟語が合体して「体外受精」「顕微授精」なんて言葉が出来ます。例えば、「顕微授精により体外受精に成功する」わけです。いずれも、初歩的術語で、絶対間違えてはいけない言葉です。間違えると、権威もへったくれもなくなってしまいます。

ところが、問題はこれをワープロが誤変換することです。ワープロは「体外」「顕微」と「授精」「受精」とをバラバラに記憶するので、直前での変換次第で「体外授精」と変換したり「顕微受精」と変換したりするわけです。

で、ある雑文の中で、この初歩的ミスをしてしまいました。「体外授精」「顕微受精」で出版されてしまいました。3日ほどで急いで書いた依頼原稿で、校正もなかったんです。ワープロがいけないんです。

最大のミス#2となってしまいました。先ほど気づいて、数時間、気分が真っ暗です。



みなさん、誤字には気をつけましょうね。