講義ノート作り

毎年2月は一年間使用した講義ノートの改訂作業をする。

今週は、近代日本生殖意識に関する講義ノートのリライトをしているが、なかなかうまく書けない。特に、優生学という科学の持つ意味については、わかりやすく説明する方策を毎年考えているのだが、いまだにうまくいっていない。そこで、今回は完全にリライトしてやろうと思ったのだが、やはりうまく議論を展開できない。困っている。

頭を整理するために書くと…

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一番の難題は、科学というものの存在を常識と対立的に捉えず、科学も常識も局域的に達成される何事かであるということ、科学とは科学に言及しつつなされる活動の総称なのだという論点①をどうわかりやすく説明するか?ということ。これはテキスト/Grammar of Reproductionの核心部の理解にとって必須なのでどうしてもうまい説明を考えねばならない。

テキストでは優生学という深層構造の管理実践を次のように展開した;

優生学は背景的知識/深層構造をなしていたことをまず指摘し、ついで
2科学(背景的知識/深層構造)と常識の管理実践に論点を展開し、さらに
3この実践としてとりわけ沈黙の重要性を指摘する

さらに、これに、もう一つ、優生保護法から母体保護法への改訂に際しての優生学の役割という論点②を付け加えたいと考えている。こちらはテキストには書いてない。テキストの本来のポリシーからすると、論点①と②を関連づけるのは禁欲しなければならないことなのだが、論点①の提示だけでは何とも講義として面白味に欠けるという営業上の理由から強引にねじ込むことに決定。

とはいえ、論点①が②にどう関連しているのか、自分でもよく分からない。自分のポリシーに反したことをやろうとしているせいで、思考回路にロックがかかっているような気もする。

論点②は単純な、優生学という深層構造の存在の主張だ。論点①がこの優生学/深層構造の局域的な管理の主張になるから、一番単純な関連づけの仕方としては、産児調節運動において開発された、優生学の深層構造化のメカニズムは今も生きている――という方向性しかないだろう。つまり、これはハッキングの深層構造概念理解の要諦でもあるが、深層構造の深層構造としての身分は局域的な管理実践(それは呼び出しのメカニズムでありかつ深層化のメカニズムでもある)によって維持されているということをきっちりと説明すること、そしてこのメカニズムは強力に機能し、今に至っているのだ――という感じ。

ただ、これを構造主義なんか当然全然知らない学生にその意味が分かるように、しかもこう考えることがおもしろい、新しい発見につながるということをデモするように説明するとなると頭をかかえてしまう。


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まだ悩んでいる。いろいろと雑念があって(別枠参照)集中できないのでだらだら悩んでいる。どうしようもない。

話の流れとしては論点②を先行して説明し、ついでこれを産児調節運動における優生学の管理実践という論点①に結びつけるという方向で行こうということは決めて、論点②の部分の説明はどうにか書き終えた。

次に、難題の優生学の管理実践を説明しなければならないが、はたしてどこまで説明するか?これが次の問題だ。何しろ相手は学部学生。どうしたものか…。明日やろ、っと。