6月18日 フランスvs韓国

1−1。フランスはなぜこんな状態になってしまったのか?プレイヤーの心中を察してつらくなるゲームだった。

前半、韓国はまったく何もできなかった。ボールの支配率は30%足らずではないか。決して戦術的に、前半は守りを固めて後半勝負ということを考えての結果ではない(もし誰かがそう言ったとしたらそれは結果からする議論以外の何物でもない)。韓国は繰り返し前線に向けてボールを供給しようといろいろな方法で(センターから、サイドからのパスワークで、そしてロングボールで)試みたが、すべてフランスの守備に阻まれ、シュートを打つどころか最終ラインにすらほとんど到達できなかった。何しろパスが3本と繋がらない。戦術としてパスを繋がないなどということはありえない。他方、韓国守備陣はフランスのパスワークで簡単に突破されてしまい、かなり強引なタックルでこれを止めるしかない、さもなければ最終ラインでどうにかこらえるという状況が延々と続く。8分、ヴィルトールのシュートミスがDFの間を抜けて目の前に転がったアンリがこれをなんなくゴールに流し込んで得点するが、フランスのパフォーマンスはこれをラッキーではなく必然的な結果と見る者をして思わせるに十分なものだった。そして、30分頃、左からのコーナーキックヴィルトールが頭であわせて2点目・・・のはずだったのだが、これがボール全体がゴールラインを超えていないと判定されノーゴール。キーパーがシュートをかき出したのだが、繰り返し流された再生映像を見るとキーパーは完全にゴール内にいるし(韓国GKは危険な場面になるとゴール内に入ってしまうという初歩的なミスを何度もしていた)、ボールも間違いなくゴールラインを越えている。韓国にとってはラッキー以外の何ものでもないが、フランスは運からも見放されているとしか言いようがない。これが得点と認められていればゲームはまったく違ったものになっただろうに。(ドメネクは試合後猛烈な抗議をしたらしい。)

後半、韓国は中盤のパスワークを省略しFWにロングボールを送り、これをトップ下に下げたパク・チソンが拾って起点を作るという戦術をとる。こういう戦術は現代フットボールにおいてはヘボ・フットボールの代表ということになっている(日本の課題が決定力のあるFWの育成にあるとすれば、韓国の課題はこのようなフットボールからの脱却であるに違いない)が、中盤でパスワークがまったくつながらない以上しょうがない。しかし、この戦術もフランスのDFに上手くあしらわれて結局功を奏さない。ただ、フランスも後半になるとボールを支配しつつも韓国DFに完全にはね返されてしまいまったく得点できない。フランスが基本的にボールを支配しながらも得点できないという時間がだらだらと流れる。そして、後半40分も目前。フランス左サイドをどうにか抜けたイ・ヨンピョが上げたクロスをファーにいたチョ・ジェジンがヘッドで中に折り返しパク・チソンがそのボールを足に何とか当てると、それがGKバルデスの上をわずかに越え、さらにバルデスの横に詰めていたギャラスがこれを十分クリアできたにも関わらずなぜか自分の目の前のボールを見送ってしまい(恐らく瞬間的に重心が後ろにかかってしまっていたのだろう)、ゴール。1996年アトランタオリンピックで日本がブラジルに勝った際(マイアミの奇跡)、その失点をブラジル監督は「事故」と言ったが、この得点も限りなく「事故」に近い。私が見る限り、イ・ヨンピョがまともなクロスを上げたのは後半この時の1本だけ、韓国がこのゲーム90分でシュート(と呼べるもの)を打ったのは(コーナーキックフリーキックを除けば)このパクのシュートを入れて実質的に2、3本、フランスゴール枠内に飛んだボールはこの得点を入れて2本だけ、である(ちなみに、マイアミの奇跡においても、日本は守りを固めロングボールを多用する戦術を取っていた)。しかし、この事故とも呼べる失点で大きなダメージを受けてしまうのが今のフランスである。プレイヤーの表情にはショックがありあり。その後、最後の5分間にフランスは2度ほど決定的なチャンスを迎えるのだが、アンリはこれを決められず、結局ドロー。ダイビングヘッドを試みて白いユニフォームの胸に大きなドロをつけうつむくアンリを見るのは、「アンリはワールドカップで決められない」と騒いでいたフランスメディアがまた大騒ぎするだろうことを考えると、少なからずつらいものがあった。

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フランスにとって、このゲームの失点は事故だから放っておけばよい。問題は得点能力が極端に落ちていることだ。ほぼ全時間、フランスはゲームを支配していたにもかかわらず得点は最少得点の1点。やりたくてもできないようなシュートミスをするFWのいる日本と違い非凡なFWを多数擁している(シセは残念なことをしたが、それでもアンリ、トレゼゲヴィルトールである)にもかかわらずこの結果なのだから謎としか言いようがない。いったいなぜだろうと思いつつゲームを見ていた。

フランスの中盤は非常に似たような人間だらけである。それは一言で言えば小粒なジダンがいっぱいといった感じである。まるでジダンを規準にジダン度といったものがあってその数値の高い人間から代表に選んだかのようだ(今シーズン、バルサチャンピオンズリーグ優勝の立役者であるルドビク・ジュリが代表落ちしたのは彼のジダン度が低いからと考えれば、十分納得がいくではないか)。しかし、これは、ジダンが圧倒的なパフォーマンスを誇った時代ならいざ知らず、ジダンが普通のプレイヤーになった(フランスが完全に優勢であった前半であっても、ジダンのパスは受け手からして一歩、あるいは半歩ずれているという場面が非常に目立った)今となっては攻撃が緩急のない単調なものとなる原因となっているように思われる。どうしても似たようなパスワークが延々と展開されるので、相手DFが慣れてしまうし、しかもパスがなまじ回る分だけ最前線のFWアンリに到着するのに時間がかかってしまう。かつてバルデラマがいた頃のコロンビアがまさにそうだったが、ボールをこねくり回すだけでは決して得点できない。

アンリはそもそもアーセナルでのプレイを見れば分かるが、ヘッディングが大得意で最前線中央に張ったままボールを待つというような選手ではない。アーセナルにおいてアンリはほぼ一切の攻撃を仕切る立場にある。ボールは何よりもまずアンリをめがけて直線的に供給され、アンリがシュートを打つことが可能なら打ち(アンリのとんでもないスピード、トラップ技術がどれほどとんでもないゴールを産んできたことか)、ダメなら‘ため’を作り(アンリがDF3人に囲まれても悠然とボールをキープしているのを何度目にしたことか)周りの人間を動かすパスを出す(例えば今年のアーセナルにおけるセスク・ファブレガスの成長はアンリに反応できるようになった一点に尽きると言ったら言い過ぎか)というような役割を演じている。

しかし、ジダンが絶対的な規準で作られたチームにおいてアンリはこのような役割を果たすことは期待されていないし、またしようとしてもできない。アンリとジダンの不仲説がいろいろとメディア上にはあふれているが、これは内面の問題ではなく戦術の問題なのだ。ジダンとアンリは戦術的に共存できない(と言いきってしまう)。恐らく一度代表引退を表明したジダンを代表に復帰させるべきではなかったのだ。ジュリのようなスピードのあるプレイヤーを代表に選んで(この点でシセのケガは痛すぎる)アンリを中心としたもっと走り回るスピーディなチーム作りを目指すべきだったのだ。となると、どうしても監督の力量というものを考えざるを得ない。批判されてもベロンを切ってチームを一新しリケルメ中心のチーム作りをしたアルゼンチンのペケルマンと、批判されて結局ジダンに復帰を依頼してしまったドメネク

哀愁ただようフランスは1次リーグを突破できるだろうか?