6月27日 ブラジルvsガーナ

3−0。やはりブラジルは別格だと実感したゲーム。

前半立ち上がり、ブラジルは中盤全体を押し上げていこうとするが、(イタリア戦でも非常に際だっていたガーナの中盤のパスワークにこれができず、むしろ中盤ではガーナにボールを支配されるようになる。大方はブラジルはパスワークが劣っていると見るだろうが、私はむしろこの事態に対する対処にブラジルのすごさを見た気がした。ブラジルは、ガーナが中盤優勢と見るや無理にこれに対抗しようとせず、イタリアが対オーストラリア戦で見せた「引いてカウンター」の戦術を“試合の中で”いつの間にか取ってしまう。イタリアの対オーストラリアの戦い方を見て、通常のチームは自分たちの勝ちゲームのパターンを持っておりそのパターンでしか勝てないが、イタリアは複数の勝ちゲームパターンを持っている(その気になればとんでもない中盤のパスワーク+プレッシングを見せて相手を圧倒することもできるのに、それを封印しても勝ちにいくことができる)とんでもないチームだと思ったが、イタリアは当然試合開始以前にその日のゲームをどのような戦術で行くのか明確にしていた。ブラジルはそうではない。ブラジルが対ガーナ戦で「今日は‘カウンター狙いで’」などと試合開始前に戦術的な確認をしたとは思えない。イタリアはオーストラリア戦でそのフォーメーションから即座にカウンター狙いの戦術を取っていることが分かったが、ブラジルは最初むしろ中盤全体を押し上げようとしている。ブラジルは‘試合の中で選手同士が語り合うこともなく暗黙の内に、しかもなめらかに’「引いてカウンター」のフォーメーションに移行していったのだ。ブラジルはその場の判断で即座に相手に対して最善のフォーメーションを取ってしまった!(ジーコは繰り返し組織では勝てない、選手がすべてと言ったわけだが、このゲームでのブラジルの戦いを見れば、その意図がよく分かろうというものだ。が、その言葉を完全に具現化しているのは世界でもブラジルしかないんじゃないかと言いたくもなるよな。)しかも、ブラジルは、これもすでに指摘したとおりガーナの最終ラインが押し上げてくるにもかかわらず集中力が欠けており統率されていないのを即座に見抜いてしまう。集中力が欠けているとはいえ、イタリアでさえなかなか破ることができなかった水準にあるガーナの最終ラインを、ブラジルは簡単に突破して前半だけで2得点(アドリアーノのシミュレーションを取られた場面で得点が入っていれば3点!)。

後半。ガーナは前半こそブラジルのゴールに迫れたが、もはやブラジルDFはその攻撃を完全に‘見切って’しまう。これもすでに指摘したが、ガーナの攻撃は方法論、技術が欠けており、突き詰めて言えば中盤のパスワークを相手DFにぶつけることしかできない。真っ正面から真っ正直にパスで崩す以外できないガーナの攻撃(とはいえ、その攻撃はチェコを粉砕するには十分な威力があるのだが)に、ブラジルDFは後半になると完全に‘慣れてしまう’。こうなると、もうブラジルはガーナに攻めさせておいて、ときおり速攻を仕掛けるだけでよい。実際、ガーナは後半やはりボールを支配しながらほとんどブラジルDFを慌てさせることができず、逆にやっぱりカウンターを食らって、正確にはボランチゼ・ロベルトに最終ラインの裏に飛び込まれて1失点(ボランチが最終ラインの裏への飛び込みを何度も試みるというのもすごい話だよ)。ブラジルはほんとはもっと得点できても良かったのだが、終盤になると余裕をかませすぎて得点できなかっただけ(カフーなんかシュートミスして笑ってる始末)。パレイラは余裕の選手交代をして、くつろいでいたことだろう(ガーナに主導権を取られた中盤の構成に関しては不満かもしれないが)。

NHKアナウンサーはさかんにガーナ優勢と述べていたがこれはまったく間違いだ。たった一つの勝ちパターンしか持たないガーナと、フォーメーションなどその場で最適に作り上げてしまうブラジルとでは、アマとプロの違いほどの実力差があったというのが真実だろう。ロナウドが不調(やっぱりぜんぜん走らない)とはいえ、ブラジルにとってはFWの一人くらい不調の方が緊張感が出ていいのかもしれない、とか思ってしまった。