日本vsガーナ

10/04 横浜日産スタジアム

0-1。水、木、金とフルに仕事で今日やっと見た。

ガーナはエシエンを筆頭にほぼベストメンバー。ガーナがよくこれだけのメンバーをAマッチデーでもないのに極東くんだりまで連れてきたと思う。アジアツアーとのことで日本戦のあとには韓国戦もあるらしい。所属クラブチームとの関係はどうなっているのだろうか?・・・などということを考えてるとキックオフ。で、ゲームを見てみると、やはりと言うべきか、ガーナのパフォーマンスはまったく練習試合レベル。走る量、スピード、プレスの厳しさ、パスワークの緻密さ、スピードなどこの前のドイツWCの時とぜんぜん違う。エシエンなんかにこにこしながらプレーしてる。WCであるいはチェルシーで見せる鬼神の形相のエシエンとは別人。「なーんだ、やさしそうないい人じゃん」って感じ。TV他のメディアは、強豪ガーナに0-1の惜敗とか言ってるけど、ほんとに「なーに、言ってンだか」としか言いようがない。ガーナがWCのイタリア戦、チェコ戦でどれほど凄かったか知らないだろ?チェルシーでのエシエンの運動量を知らないだろ?日本代表のプレーが、今回のガーナ相手に少しばっかり、スピーディに見えたとしても、WCの本番でやったら、3-0でコテンパンだよ。

オシムの日本代表の方向性は明確過ぎるくらい明確だ。それはWC出場チームで言えば、ドイツ、さらにはポルトガルやスペインといった国が具現化していたような、古典的ゲームメーカーを排除し、スピードを重視したフットボール(→http://d.hatena.ne.jp/Zephyrus/20060712)ジーコの古典的なフットボールを延々と見せ続けられた目にはその人選も含めて非常に新鮮で、可能性にあふれているように見える。日本もやっと世界標準に近づいてゆくのかと感慨深いものがある。

この方向性で日本の可能性を押し広げるのはもちろんいいことだと思う。しかし、WCで得られた教訓からすると、この方向で行けば途端に日本に明るいが未来が開けてくるかのように考えるのは間違いだろうとも思う。

スペインなどスピード重視のパスフットボールはどうしても相手ディフェンスを突破する戦術に欠けるきらいがある。とんでもないスピード、精度を持っていたスペイン、ポルトガルさらにはガーナが結局負けたのは、近年ますます強固になっているゴール前のディフェンスをなかなか高速のパス回しだけでは崩せなかったからだ。どうしても最後のディフェンスラインの突破は単純な高速パスワークを超える創意とでも呼べるようなものが必要だということはドイツWCの教訓だったと思う。一番いいのは高速のパスワークの中継点となり、かつ創意を持つようなマルチな人間を発見する、育てることだが、そんな人間は日本にはいないし、簡単には育成しようもない。創意どころかパスの精度も強豪国を見慣れた目にはまだまだとんでもなく低い。このようなチームでは、オシム流のチーム作りをしたとしても、まず得点欠乏症は解消しないだろう。チームのスタイルは変わっても、得点能力はジーコ時代と大して変わらないと思う。

マルチな人間は当然いない、パス精度も高水準とは言えないとなれば、‘チームとして’相手ディフェンスを崩す方法論を考えねばならない。恐らくその方法論の一つは、‘チームとして’多少スピードを犠牲にしても創意を発揮できる(とまでは言わないまでも、何か変なことができる)選手を代表に入れること。

そこで、アレックス。今回私はなぜアレックスがここにいるのかを考えつつゲームを見ていたのだが、アレックスが現日本代表で先発し続けているのは、以上の方法論的要請によるのだろうと思わざるを得なかった。アレックスは現代表の中でかなり異質だ。球離れが遅い、(それほど上手くもない)ドリブルを仕掛ける・・・パスワークがアレックスで滞っているのは誰でも分かる。ただ、アレックスはパスワークで単調になりがちなゲームにドリブル、アーリークロスといったものでアクセントをつけることができるという点ではなかなか貴重な存在であるように思う。アレックスがいなくなれば現日本代表はまったくアクセントのない(しかも、それほど精度が高いわけでもない)パス回しだけのチームになってしまう。パスワークをこなしつつ、プラスアルファで何かできる(正確なアーリークロスを打てるとか)人間がいればいいのだがいないんだから、アレックスの起用もやむなしといったところが現日本代表の現実ではないか?無論、これは、もし中村俊介松井大輔が代表入りすればアレックスは不要となることを意味する。ただ、セルティックにおいて中村の存在価値があるように、現代表ではアレックスの存在価値はあるように思う。