猫の死

今日夕食後の8時頃、Yと近所のTUTAYAに行くためにマンションを出ると、マンション入り口のすぐ前の幅4mくらいの道路の端から1mほどのところに黒白まだらの猫が横たわっている。近づいて見ると、体に傷は見あたらないが、頭から血を流している。道路にも血がほんの少し黒く流れている。ぴくりとも動かない。触ってみるとまだ暖かい、が、反応はまったくない。Yと顔を見合わせる。どうする?放ってはおけない。Yが新聞紙を取りに戻る。その間、私は道路に立って、走ってくる車を合図して迂回させる。私の足下には猫の死体。

Yが新聞紙を持って戻ってくる。猫を新聞紙にくるんで持ち上げると、血が道路にかすかに流れ落ちる。そっと目の前の小学校の正門の脇に置く。さあ、どうする?とYと話す。これがウィークデイの昼間なら区役所に連絡すればいいのだろうが、今は土曜の夜。区役所に連絡できるのは明後日になる。かといって、マンション内に持ち込むことはおよそ出来ない。そして、まさかここに放置しておくことも出来ない。しょうがないので警察のやっかいになることにする。110番に電話して事情を話すと、警官を差し向けると言ってくれる。

待つこと15分ほど。近くの派出所から警官が一人自転車に乗ってやってきてくれる。ふと見ると、猫の下半身周りに液体が広がっている。尿だろう。警官が持参した袋(東京都推奨ゴミ袋!)の中に猫を入れている間、3人でこの周辺の猫事情について、野良猫が結構いるとか、ここは車がスピードを出すところじゃないとか、この猫はこの近所で見たことがあるとか、この猫は太っているから飼い猫だとか、しきりに話をする。何か話していないと、やりきれない気持ちになってしまうのだろう。猫を袋に入れ終わった警官は、「週明けには区役所に引き取ってもらいます」と言い残して、早くここから立ち去りたいかのように、自転車で走り去っていった。



私は子供の頃何匹も猫を飼った。だが、猫たちはいつの間にかいなくなってしまった。そして、いなくなった猫を探しているとき、家から50mほどのところにある長距離トラックが頻繁に通る交通量の多い国道の上に、いなくなった猫と同じ色のカーペット状のモノをふと見つけ、泣いて家に帰ったことが何度かあったのだが、恐らく、今日からしばらく近所のどこかの家で、飼い猫が帰ってこないと家人が言い合うことになるのだろう。それを考えると、この事情を知らせてあげたい気がするが、やはりこればかりはどうしようもない。