UEFA チャンピオンズ・リーグ 準決勝 ミランvsマンチェスターutd 2nd-leg

5月2日 ミラノ ジュゼッペ・メアッツァ


ミランの巧さ、強さだけが際だったゲームだった。豪雨(雷雨)にもかかわらず雨など降っていないかのようにプレーするミランのプレイヤーはいったい何者なのだろう?かつて日本代表が雨のサンドニでフランス代表に5-0で負けた時、監督のトルシエは(雨をものともしない)フランスのプレイヤーを「宇宙人のようだ」と言ったが、豪雨の中何事もなくプレーするミランのプレイヤーはまさに別世界の住人のようだった。

ミランオールドトラフォードでの1st-legにおいても、ほとんど試合を制圧していた。最後の30分間、ミランはバランスを崩したが、これはガットゥーゾの負傷退場によるところが大きい。もしガットゥーゾが試合終了までプレーしていたら、試合は悪くてもドローだったろう。


マンUにとってはファーディナンドヴィディッチという最終ラインの中心プレイヤーが出場できなかったことが大きかったとも言えるし、色々な意味でマンUは経験不足だったとも言えるが、このようなコメントは単に結果を語っているに過ぎない。考えるべきは、最終ラインに穴があると感じさせ、経験が不足していると感じさせたミランの戦術だろう。ミランの戦術がこのように記述できるゲームを作り出したのであり、最初からそうした記述がある訳ではない。勝負は前半、マンUボランチから最終ラインの守備陣営が完全に翻弄されまったく対処策を見いだせない状態がミランによって‘作り出されて’決まった。

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ピルロセードルフ、カカと3人ともゲームを組み立てることができる。マンUボランチの二人は特にこの3人の華麗なポジションチェンジとパスワークに完全に幻惑されてしまいdazed and confused、最終ライン前に張り付けられてしまう。これによって、最終ライン前に広大なスペースができて、とりわけカカ、セードルフはますますやりたい放題し放題――。マンUからしたらまさに悪循環である。しかし、この作業をミランは豪雨の中でやってのけたわけで、これには本当に驚いた。

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1点目のきっかけは、ネスタからセードルフへのアーリークロス気味のパス。これにマンUディフェンダーは絵に描いたようにボールウォッチャーになって、全員がボール落下点、つまりセードルフに引きつけられてしまう。「カカをフリーにしてどうする!?」と思った瞬間、案の定セードルフは3、4m後方にいたそのカカにパス。フリーのカカはねらいすましたようにゴール右端にゴール、である。どうしようもない。

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見るに見かねたスコールズギグスが、このスペースを埋めるために中盤にはりつく。こうなると、最前線へのボール供給ラインはロナウドのドリブルだけ。(これはマンUの最悪の状態。マンUが負けるときはいつもこのパターンになる。)ここで役に立つのが無論、食いついたら離れない、つぶしのスペシャリスト、ガットゥーゾロナウドがドリブルし出すやガットゥーゾがタックルを食らわせる――この場面が何度繰り返されただろう。オシム流に言えば、ミランの戦略は「水を運ぶ人間」をロナウド一人だけにしてしまい、これをガットゥーゾが徹底マークでつぶしてしまう、というところか。


これで決勝は因縁のリヴァプvsミラン。一昨年の決勝での逆転劇はまだ両チームの監督、プレイヤーの頭にこびりついているだろう。

ミランは必ず、マンU戦と同じく、なるべく早く前半の内に試合を決めに来る。前回のリヴァプ戦も前半に3点リードしている。イングランドのチームにはハイスピード、ハイテクニカルな細かいパスワークについて行ける能力はまずない。ミランとしたら、前半なるべく大量得点をして、後半を守備重視+カウンター狙いでしのぐというのが勝ちパターンだろう。

他方、リヴァプからしたら前半の失点を可能な限り回避して、後半の体力勝負+カウンターの打ち合いに勝機をかける戦い方になる。

予想;(負傷者、故障者が出なければ)ミランが勝つ。昨年アンフィールドで直にリヴァプを見た人間としてはリヴァプを応援したいところだが、今のミランの攻撃力、守備力はリヴァプを上回っていると思う。何しろモチベーションが違う。今年のミランにとってボロボロのプライドを回復できる場所はチャンピンズ・リーグしかない。