PARIS


Paris

Paris


Big Town 2061

Big Town 2061


PARIS――たった2枚のアルバム(‘Paris’1975,‘BigTowne,2061’1976)を出して消え去ってしまったこのグループの特質は、恐らく、その活動した時期の問題を抜きに語ることはできない。

PARISはまず何よりも洗練と技巧によって特徴付けられる。Zeppelinの登場以降十分時間が経過し、新しい才能がもはやZeppelin的なるものを美しい方程式としてまとめ、非常に洗練された楽曲を提示することができるようになったということ――このことを、1975年に登場したPARISは如実に示していた。

そして、さらに、PARISはその独特な現実感によって特徴付けられる。ロックの歴史は、70年を前後する初期ロックが現実に対する違和感を重要なモチーフとしていることを証している。現実に対する幻滅dissilusion、当惑daze、混乱confusion、抗議protest、批判criticism、破壊destruction。だが、1975年に登場したPARISの現実に対する態度はそのいずれでもなかった。それはあえて言えば、現実のゲーム感覚――混乱も抗議も含めて現実はゲームでしかないという醒めた現実感。まさに‘Outlaw Game’(だからPARISをハード&へヴィロックの系譜で考えようとするなど根本的に間違っている)。この独特の現実感(あるいは現実感のなさ)はPARISの本質をなしている。PARISというどこかよそよそしいグループ名、そして抽象的で浮遊感覚を喚起する、仮想の未来都市というセカンドアルバムのコンセプトとジャケット写真(砂漠に浮かぶ蜃気楼のような未来的オブジェの数々)、‘Black Book’がその典型だろうが、あらゆる思い入れを脱臼させるかのような異様に軽いギターリフとやる気のないシャウト――これらはPARISの現実感覚を雄弁に語っている。

しかし、このような当時としては卓抜なコンセプトを持ったPARISは大きな支持を得られなかった。少なくとも、70年代の半ばではそのコンセプトは革新的すぎた。そして、いつの時代でも結局のところ、現実をゲームとして生きられる人間はごく少数なのだ。1977年、PARISの技巧的でクールな音楽は、SEX PISTOLSのほとんどやけくその破壊衝動の轟音の中であっけなくかき消されてしまうのであった。


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このPARISの二枚のアルバム、ふと20年ぶりに聞きたくなって、ネット上に落ちていないか検索したのだがまったく影も形もない。しょうがないので、アマゾンで買うかと見てみると、現在、アマゾンJP、アマゾンUSではプレミアが付いて数万円などという途方もない値段が付いている。どうやら在庫限りで廃盤の運命にあるらしい。結局、アマゾンUKのマーケットプレイスに通常価格で出品されているのを発見し、入手。明細は以下の通り。

Items Purchased: 1 of Paris [Audio CD] Paris (£9.99) & 1 of Big Towne 2061 [Audio CD] Paris (£8.99)

Postage & Handling: £7.16

Your Total: £26.14

6250円といったところ。