Man. United vs. Chelsea 

Champions League Final - 21 May 2008 20:45 (CET) - Luzhniki Stadium - Moscow

Man. United 1 - 1  Chelsea
Man. United Man. United (6 - 5) win on penalties Chelsea


チェルシーが勝つと思っていたのに・・・(最近ほとんど予想が外れたことがないのに)。まさかテリーが足を滑らせるとは・・・。イングランド男の代表のような男が号泣するのを見て、恐らく13500人位のイングランド人がもらい泣きしたことだろう。日本でも520人位はもらい泣きしたと思う。テリー、泣くな。

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韓国メディアはパクが先発どころかリザーブからも外された(それゆえメダルを獲得できなかった)ことに呆然としているようだが、ここまでのプレミア、カップ戦のゲームをちゃんと見てさえいれば(http://d.hatena.ne.jp/Zephyrus/20080409/1207724014http://d.hatena.ne.jp/Zephyrus/20080504/1209911587)ファーガソンの決断は「無情な」ことでも「差別的な」ことでも何でもなく、まったく正当な戦術的な決定だということは誰でも分かる。韓国メディアはイングランドメディアもファーガソンの決定を意外と受け取っているといった報道をしているが、少なくともネット上でこのような記事を見ることは出来ない(あるいは少なくとも私には発見できない)。わずかに掲示板上で、ファーガソンは人種的偏見があるとの書き込みをした人間がいることはいるが、これも誰からもまともに相手にされていない。パクが外されたことは話題にもなっていないのが現実だ。「(パクがゲームに)いない」と言う人間こそフットボールに別の価値を重ね合わせているというのが正しいところだろう。

私はパクが嫌いなわけでも韓国が嫌いなわけでもない。私は、パクがManUにいるのがフットボールの能力以外の要素においてであるということが見え見えなのが嫌なのだ。これは韓国メディアだって気づいている。韓国メディアは、今回の一件でManUの営業担当が「東アジアでの支持を回復するのには時間がかかる」といったコメントを出したということを報道している。このような報道は、韓国メディアがパクの存在が対東アジア向け宣伝要員であることを知っており、そのような事情を背景に自らの報道がManUに対する圧力になることを知っていることを示している。韓国メディアは自らの報道が実はパクにとって一番むごい仕打ちであることに気づかないのだろうか?

(韓国メディアは日本のメディアがパクを「努めて」無視しているとか言っているが、これは間違っている。私からすれば、日本のメディア、解説者は涙ぐましい努力をして、パクを褒め称えている。イングランドメディア内での、パクの評価は基本的に「ManU内最低」である(某大衆メディアは、はっきり、パクに「技術はない。努力はしている」という評価を与えている)。それに引き替え、日本の解説者は欠点には一言も触れず「運動量豊富、苦労をいとわない、動きがいい」と賞賛をもってパクを語っている。私など、解説者がパクについて触れる度に、「波風立たないように語るのは苦労するな」と思ってしまうほどである。)

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ファーガソンハーグリーブスをウィンガー起用したゲームというのは少なくとも私は見たことがないが、以前にも言った通りhttp://d.hatena.ne.jp/Zephyrus/20080412/1208011298、これはまったく理に適っている。というか、今にして思うとだが、ハーグリーブスのウィンガー起用のシステムを最後の最後までファーガソンは隠していたのではないかと思えてくる。ハーグリーブスはほとんど一人でローマを粉砕した人間である。イングランドメディアはManUの前線がルーニーテベスロナウドの3人だけだった(控えFWもいなかった)ということを盛んにファーガソンの「奇策」と評しているが、ハーグリーブスがいれば実質4人FWがいるようなものということを忘れているのではないか?

ロナウドは敵のマークが張り付くのは間違いなく、そのときロナウドが技術系のDFには意外と簡単に封じ込められてしまうことも予想できる。例えば、バルサ戦ではザンブロッタに、昨年のミラン戦ではガットゥーゾロナウドは完全につぶされてしまっていた。ファーガソンは、そんなとき、2トップに向けて「水を運ぶ」人間として、ハーグリーブスに目を着けていたに違いない。現時点では、ハーグリーブスはウィンガーとしてロナウドに次ぐオフェンス能力を持っているし、ディフェンス能力も考慮すれば、中盤から前ではロナウド以上の働きをすることが期待できる。実際、前半30分ほどまで、エシエンにぴったり付かれていたロナウドに代わって、ハーグリーブスチェルシーディフェンスを何度も突破し、たびたび正確で高速のセンタリングを上げている。そして、このハーグリーブスのセンタリングから、ManUの唯一の得点が生まれているのだから、誰が見てもファーガソンハーグリーブス起用は正当なものだろう。このゲーム、前半はウィンガーとして、後半スコールズが退いた後は守備的ボランチとして、ハーグリーブスはこのゲームのベストプレイーヤーだったと思う。

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チェルシーはこれまた予想した通り(http://d.hatena.ne.jp/Zephyrus/20080504/1209911587)、CHにランパードバラック、1ボランチマケレレの布陣だった。だが、この布陣はチェルシーのベストではない。

ワールドカップ決勝Tのような一発勝負、しかも力が均衡しているチーム同士、さらに言えば相手を知り尽くしたイングランド・チーム同士の闘いとなれば、絶対に、守備を固め相手の長所をつぶし合う、慎重なゲームとなるのは目に見えている。実際このゲームは、例えばWCの決勝に似た、派手なところのない地味なゲームだった。(こういう試合を面白くないという人間が結構多数いるが、私としてはむしろ、こういう極度に緊迫した心理戦めいたゲームをなぜ楽しめないのか、つくづく疑問でしょうがない。フットボール見るの止めていいよ、って感じ。)こういうゲームとなれば、2ボランチの守備的な布陣を取る方がいいに決まっている。だが、この布陣を採用したManUに対して、チェルシーはこれを採らなかった、というか取れなかった。すでにこれも言っているが、グラントにはランパードバラックのどちらかを先発から外すことなど出来るはずがないから。

バラックチェルシー加入時に比べてずいぶん守備をするようになり、ランパード→前目、バラック→後目の役割分担が出来ているが、それでもバラックは守備の人間ではない。スピードが特別あるわけでもないし、ボール奪取の技術が特別あるわけでもない。マケレレは驚異的なボール奪取能力を持っているが、やはり一人ではつらい。マケレレ+エシエンの2ボランチ、右SBにはいつも通りパウロ・フェレイラという布陣で行く方が良かったのではないか?確かに、エシエンはロナウドを押さえ込むのに右SB起用されたのだろうが、「ボランチのエシエンがロナウドを基本的にケアし(例えば、ミランガットゥーゾのように)、場合によっては右SBのフェレイラと二人でケアする」という風にした方がいいに決まっている。結果的にだが、この日のエシエンが「切れていない」せいもあって、ロナウドを止めきることが出来ず何度もドリブル突破されるのも、そして、ロナウドの右サイドにマケレレが引きつけられている時、サイドチェンジされ、ハーグリーブスチェルシー左を突破という図式が前半繰り返されるのも、2ボランチであれば防げたのではないか?実際、後半、エシエンがとてつもない運動量でサイドから内側に絞って、ボランチ的な働きを兼務するようになる。しかし、これは当然エシエンに過剰な負担を強いるものだ。チームはこれによって安定したが、この安定は、高負担のエシエンを突破されると右SB位置に広大なスペースが出来てしまうというリスクを抱えてのものだった。このリスクをロナウドが突いて決定機を作る場面を見る度に、「ああ、2ボランチであれば」と私は思っていた。(だから、この日、エシエンが「切れていない」ように見えたのは、戦術的な理由もあってのことと言うべきなのだろう。エシエンの運動量は本当に人間離れしていた。)

しかも、前半右サイドの守備に手こずったため、右ウィンガーのJ・コールまでがエンドラインで守備をする始末。J・コールは、後半頭にはDistance Coveredがすでに9Kmほどになってしまい、足をつらせてアネルカに交代となって、まったく得意の突破を見せることが出来なかったという印象が強いが、これもチームバランスが取れていない、その結果としか見えない。J・コールはもっとゴールに近い位置でプレーしなかったら、J・コールじゃないだろう。私はJ・コールみたいなちびっこくてスピードのあるプレイヤーが好きなのだが、スピードに乗ったドリブルとかを全然見られなかった。つくづく残念だ。

こう考えてくると、ランパードバラックの二人を先発させたことの代償は非常に大きいと言わざるを得ないと思う。チェルシーは、ドログバ+J・コール+マルーダの前線に、トップ下のランパードあるいはバラックという攻撃布陣を採用すべきだった。でも、何度も言うが、それはできない。バラックを取ったのは油まみれビッチ(アブラモビッチ)の強い意向だったと言われているが、この石油成金は自分でチェルシーにハンデを与えたようなものだということだ。つくづくバカだ。ランパードチェルシーを出るとしたら、理由はこのバカさ加減について行けないからだろう。

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モウリーニョがシーズン途中で退団したのもこのバカさ加減について行けないだろうからだろうが、逆に言えばグラントはよくここまでやっとも言える。グラントは顔だけ見ると、とんでもない悪人顔だが、インタビューなどを見ると、非常に物静かで控え目な紳士である。バカ・オーナーと、プライドが高く無名の監督の言うことなんか聞きそうもない選手(決勝直前にアネルカはグラントのチーム運営を批判している)の板挟みで、さぞ大変だったろうとか思わず同情してしまう。しかも今季限りでの更迭は既定事実。つくづく同情してしまう。

かたや、2冠のファーガソンはメディア上で「王朝」を築いたとか言われている。チェルシーに連覇された頃は、ずいぶん気弱になっていたようだが、また鼻の下が伸びきっているだろう。それにしても、サーの称号を持つファーガソンはイギリスでどんな存在なのだろうと思わず考えてしまう。ファーガソンの引退に賛成か反対かという、某高級紙のアンケートでは、信じがたいことになんと80%近い人間が反対している。イギリスで「理想の上司」とかアンケートしたら、上位に入るのだろうか?まさかイギリスの長島か?(たとえが古い?)