England vs USA

England
* Steven GERRARD (4')
1:1 (1:1)
USA
* Clint DEMPSEY (40')
Match 5 - Group C - 12 June

基本的にウルグアイvsフランス戦と同じタイプのゲームとなるだろうと予想した。が、発見もあった。

イングランド

今回イングランドフットボールを見ていて、どこか古めかしい伝統芸能を見るような思いがしてしょうがなかった。

国代表のような即席のチームでは(クラブチームでは可能な)連携の熟成を図ることは至難。で、多くの国はとりあえず負けない戦略を立てる。つまり守備組織の構築。そして攻撃はカウンターに委ねる。代表チームで、この方向を採らない国はごく少数。このWCではスペイン、オランダ、アルゼンチンくらいか。長い練習時間も取れない代表チームで、ここ数年、ますますテクニカルにもフィジカルにも強固となり、かつその方法論(組織論)が確立した感のある守備組織を、高速のパスワーク、個人技で打ち壊そうというのだから、こうした国のプレイヤーはただ者ではないし、またチーム作りも並大抵ではない。スペインなどは成功しているがこれはバルサを基盤としたチーム作りをしたからこそであり、アルゼンチンなどはマラドーナの趣味としてとてつもない苦労をしてメッシ・システムを作ろうとしている。守備は組織で方法論的に比較的容易に具現化できるが、攻撃は個人の技術とセンスが大きくものを言う。

これが基本的に、守備重視vs攻撃重視、カウンターvsポゼッションと言われているペアに重なるわけだが、もちろん、WC上位に行くためには、チームコンディションに応じて、対戦相手に応じて、ゲーム内状況に応じて、どちらも出来ることが要求される。短期間にゲームが集中し限られたプレイヤーしか使えないWCを、どちらかだけで乗り切るのは非常に難しい。例えば、前回WC、イタリアが優勝できたのも二つのタイプをゲーム状況に応じて使い分けることができたせいだろう。と考えると、自ずと優勝予想は限定されて、カウンター型フットボールへと変貌しながらも個人技にも秀でたドゥンガのブラジル、パスワークではNo1、今をときめくポゼッション・フットボールのスペイン、となるわけだ。アルゼンチン、オランダは乗せると恐そうだけど、守備が弱く変なところでこけそう。ブラジルvsスペインの決勝戦、見たいなあ。まあ、予想通りに行かないのがWCだけど。

で、イングランド。古めかしさを感じたのは、WC参加チームが採る二つのパターンのどちらでもないから。古典的な4-4-2。個々のタレントは十分だけど、いかんせん即席チーム。パスワークはスペイン、オランダに較べて、さらにクラブ水準とは比べものにならないほど拙く、前へ進む力も弱い。守りを固めた日本ですら突破するのに苦労したそのパスワークで、アメリカの8人できっちり固めた守備をズタズタにするのはおよそ不可能。終始攻勢ではあったがルーニーはストレスをため、ランパードもジェラードも中盤で目立つことが出来ない。SB、A・コールもG・ジョンソンも、SH、ライト・フィリップスもレノンも、その足の速さを見せることが出来ずじまい。悲しい。いっそ、4-3-3でカウンターのチームにしたらいいのにと思うが、クラブでは許せても、代表となると国民(そしてFA)が許さないのだろう。国民は真っ向から敵を粉砕するイングランド軍を望んでいる。ああ、古典的で幸福な国民たち。

イングランドはGKの明らかなミスでの失点なので勝ち点3を逃したとも言えるが、基本優勢にゲームを展開しながら追加点を入れられなかったというのも事実。勝ちきれなかったのは理由があるということだ。恐らく、ベスト16から8で華々しく散ることだろう。その儚さもまたイングランドらしさか。


アメリ

前回ドイツ大会に較べてだが、はるかに洗練されていた。これまで、やたらフィジカルまかせのサッカーをする、という印象しかなかったが、きっちり守備を固めた上で展開されるパスワークも精妙。コンフェデでスペインに勝った(未見)というのが、なきにしもあらず、という感じがした。アメリカは十分1次リーグ突破の力がある。