スミスby上谷

ドロシー・スミスについてはほとんど知識がない。しかし、上谷が語るスミスに関する説明を聞いて、色々と思うところがあった。

スミスが語るそのポリシー、特に上谷がスミスを敷衍して語る「制度」に関する説明(「activate」に関する議論)は、解釈主義的議論の典型で、およそ論理的に支持できるものではない。しかし、上谷が同時に強調していたと思われることは、少なくとも、そうしたポリシーにも関わらず、スミスの個別事例の分析はあくまでその個別事例が産出される方法の徹底的な分析となっているということ(らしい)。要するに、スミス、「入り口では優しい顔してますが、奥へ行ったらがんがんやっちゃいます」、あるいは「取っ付きは軟派ですが、根は硬派です」ってことらしい。

スミスは論文を数本しか読んだことがないので、その著作が全体として本当にこういう作りを持っているかは判断しかねる。だが、『概念分析の社会学』における上谷の論文の意図がこの作りを再現することにあったのだということはよく分かった(でも、こんなこと、当時言わなかったじゃないですか?、分からないですよ)。上谷論文を再発見した。

「取っ付きは軟派ですが、根は硬派です」。個人的には全然OK!です。世の中、その逆、つまり「取っ付きは硬派ですが、根は軟派です」、「入り口ではがんがん行きそうですけど、奥へ入ったら役に立ちません」てのばっかだから。素晴らしい能書き垂れてるんで読んでみたら、中身は普通の「社会史」じゃ、意気阻喪もいいとこだよ。