study
フーコーの「汚名に塗れた人々の生La vie des hommes infames」(Foucault[1977=2000])という小論は、フーコーが言葉というものにいかなる視線を注ごうとしているのか、非常に端的に示しているという点において、貴重なテクストである。 このテクストはよく…
翻訳にはいくつか閾というものがあるように思います。 a;どうにも翻訳文に違和感があって原文を確認したくなる地点。 b;どうにも翻訳者に信頼が置けなくなって原文を読み始める地点。 大概はaあたりで止まるんですが、あまりに頻繁にaに遭遇したりすれば徐…
学説史的関心が旺盛なEM/CA研究者は多いが、彼らに関してどうにも疑問なのは、彼らが、様々な社会学文献、哲学文献に展開される議論の論理構造に対して、およそEM的な知的訓練を受けた人間とも思えぬ、恐ろしくナイーブな態度を取っていることである。 彼ら…
ガーフィンケルの『EM研究』出版から半世紀経ったわけだが、ここ数年、EM大御所がEMの現状に関して恐ろしく悲観的な論考を発表している。 今年、シャロックの退官記念論文集に寄せたリンチの論考も悲観的だった。EMにとってよかれと思って論争をしようとして…
昔あるシンポでJim Heapはある「関心」を語った。読んだのははるか昔院生時代だが、その時アメリカの社会学をとてつもなく羨ましく思ったのを憶えている。日本で同様の趣旨の発言、論文を見たことがあるだろうか? 私はない。こうした発言ができる研究環境、…
今から5年前「EMCA研ニュースレター」に、リンチ『エスノメソドロジーと科学実践の社会学』をめぐるシンポの後、以下のような文章を寄稿した。「あなたの研究に一番影響を与えた理論家の名前を教えてください1 3」を読んだ上で、読んで欲しい。 (ネット検索…
Liberman2013 It is true that Garfinkel was highly distrustful of all theorized accounts. He once told a seminar (Garfinkel, 1979–80), “I’ll kill you if you theorize. If anybody comes in with a theory, I’ll burn it publicly.” Nevertheless, …
ここ数年、EMそれ自体を実践として考えているのだがいくつかのことに気づいた。1;80年代の状況個人的な経験を言うと、80年代、私はEMに何の興味もなかった。EMの話題は周囲にいた複数の先輩がしていたので、ゼミ、研究会の報告、論文を通じて知ってはいた。…
リンチは最近は言わないが90年代繰り返しこういうことを言っていた。 一九七五年夏のある学会で、ハーヴィ・サックスは、ある種の質問-解答連鎖の組織に関する公開講義を行った。講義後、聴衆の中のある紳士が立ち上がり、「もし私があなたの頭に銃を突きつ…
例えば、90年代以降のSTSの台頭を考えてみる。「大雑把に」考えていくつかの特徴が思い浮かぶ。 _/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/1;STSは社会的構築主義がそのバックボーンとなっていた。 2;とはいえ、構築主義の理解の…
人間に関わる科学はいつも前のめりによろよろ進んでいく。科学は誰も知らないことを記述することを目指すのだから仕方がない。言い方を変えれば、科学には「旬」があると言ってもよい。だから、旬を過ぎた科学ほどつらいものはない。5年前の、いわんや10年前…
「エスノメソドロジーは私生児の集まりだって、みんな知っている。でも、それが誰の子供かなんて誰も知っちゃいない。」(ガーフィンケル)この言葉を心に刻んで仕事をしたいものだ。自らを血筋正しき正嫡だと考えているエスノメソドロジストが多すぎると思う。
「薄い記述」と「厚い記述」とは何かということは今も問題であり続けている。私も一昨年論文内でこの点について触れたし、MEDさんもまったく同時期にこの言葉に触れている(あまりに、それが同時だったので驚いたのだが)。 この言葉に関して、EM者がまず最初…
一般的に、社会学者はインタビューデータをその背後にある現実を読み取るための資料として、扱おうとする。この態度において、インタビューデータは必ずある欠損を抱えたものとして現れる。所詮語られた言葉は言葉なのだ、現実は捉えきれるはずはない、と。…
概念分析は「使用される言語language in use」の研究だが、必ずしも「使用される表現」の研究であるわけではない。無論「赤ちゃん泣いた、お母さんだっこした」という表現から「赤ちゃん」というカテゴリーの概念分析は出来る。が、かりにある場面をして「赤…
この言葉だけは絶対、引用したかった。 多くの者が、手垢にまみれた、古くさい言葉だ、これしか言えないのか?、新しい発見はないのか?、と言うのだろう。 しかし、よく周囲に溢れる文章を読んでみるがいい。 このフーコーの言葉を凡庸で古くさいと言っている…
思想史、科学史を書こうとするとき、誰でも気づくだろうはずなのに、誰もが無視しているように思われる単純な事実は、どのようなものであれ、対象とするある思想、ある科学が、まずその思想史、科学史を語っているという事実だ。 例えば、生殖補助医療の審議…
ハッキングの思考の特徴は、記述(言葉)がいかに機能しているかを軸に様々な現象を考察しようとするところにある。例えば、ハッキングにおけるもっとも基礎的な区分は相互作用種と無関心種という記述の区分だ。ハッキングはこの区分を人間種と自然種という伝…
2日連続計20時間超の研究会が終了。☆゜。*.★゜。*.☆゜。*.★゜。*.☆゜。*.★゜。*.脱医療化と医療化に関するゴフマンの言葉をふと思い出したのでメモ。 同性愛の者が、自分の逸脱行為は病気ではない、と主張するのはよくあることであるが、注意するに値…
1. 概念分析はある言葉(概念)xの客観的に妥当な定義の解明ではなく、用法の解明を目指す。概念分析のトピックは、人々はxをいかに使用しているのか、である。xの配備、分散、接続など――これらが概念分析の最終的な主張となる。1.1. 社会学は、ある言葉xに関…
講義準備でまとめてみた。☆゜。*.★゜。*.☆゜。*.★゜。*.☆゜。*.★゜。*. 1 『社会的世界の意味構成』3章に先立つ2章において展開される、自己理解(自己の有意味的体験の理解)の現象学的分析は、ベルグソン的「持続」を指摘することから開始される。シュ…
認知症の彼女は「今日の日付が分かりますか?」と尋ねられて、「分かりません」と即答した。彼女の後ろの壁にはカレンダーがあるにも関わらず。彼女は単に、今日が何月何日かということが分からないのではない。「日付」とは「もし分からなければ、カレンダー…
こんな風に考えている人がたくさんいる。 科学は疑似科学(非科学)ではない――科学はこの差異化の中にのみある。科学はその遂行のただ中においては疑似科学と区別が付かない(将来、疑似科学とされるかもしれないから)以上、科学の現在進行形の実践を見ても、科…
障害学とかいうものが流行っていて、色々な障害にまつわる報告を聞いたり読んだりする。ここのところ、介護漬けなので、私も遅ればせに障害学に参入!した感じがする。参入してから大して時間は経っていないが、ことその集中度に関してはそうそう負ける気がし…
この論文、難解でよく分からないことだらけなのだが、冒頭「Background」の最初の一文を読むだけでも、読む価値がある。そこにはこうある。 SSSは、新たな[科学的]貢献が科学共同体に受容される方法に照準してきたが、自然科学的研究が受容、確立された発見…
by Sharrock-et-al・・・なんてのを読んでいます。ローズを読んでいたのに、何でこんなものを読んでいるのでしょうか、私は? だが、それにしても、これ、難物です。途中で、高崎行ったり、区役所や郵便局や行ったり、延々と書類書きしたり(この2週間、どのくらい…
(蓮実重彦がどこかで書いていたことだが)映画評論家の淀川長治は、一本の映画を見終わるとその美しいシークエンスしか憶えていない、ただしその美しいシークエンスに関してはこれを詳細に憶えているという稀有な才能の持ち主だったという。つくづく羨ましい…
また花粉症の季節。今年の花粉飛散量は昨年の6〜7倍とか。この10日ほどひどい状態です。予定通りなら、吉田のセインツとリヴァプールのゲームを見るために今頃ロンドンの空の下にいるはずだったのに・・・。現実は・・・東京の空の下、花粉まみれ。 ☆゜。*.★゜。*…
(http://d.hatena.ne.jp/Zephyrus/20130218/1361193153の延長で、ローズたちのしていることについてもうちょっと考えてみる。ただし、まだ、完全に「1人ブレーンストーミング」なのであとあと訂正する可能性が大です。) ローズらが目指していることは、新し…
EM/CAの研究者(学部生、院生ではない)がこんなことをよく質問/批判してくる。 1;言葉だけ研究して、活動を研究しなくていいんですか?2;歴史の分析は結局時間の流れを見渡す超越論的視点を前提することになるのではないですか?3;事実(の意味)認定のための…