study

思想史と歴史的存在論2

もう少しだけ具体的に考えてみたい。 Rabinow&Roseはこう考えて、新遺伝学における優生学の消滅宣言をしている節がある;優生学は、決定論の伝統的基礎の上に遺伝(遺伝子プール)への政策的介入が重なったところに生じた。よって、遺伝子プールへの政策的介入…

思想史と歴史的存在論

(夜9時に真っ暗になったある地方都市のホテルにて)思想史と歴史的存在論の違いを何度も口頭で言い、論文まで書いてるのだが、延々と理解されない。言い方、書き方が悪いのだろうか。「内ー外を前提とする問題を問うのではない。内ー外の境界管理boundary-work…

リンチ『エスノメソドロジーと科学実践の社会学』コメント番外

今回のコメントの要約めいた原稿を書きました。EMCA研ニュースレターに掲載されるとのこと、興味のある方はお読み下さいませ。(ちなみに、このブログで紹介した文章がいかに散漫か思い知らされました。いかんせん、ほぼ3日で書いた文章です(飛行機内、ホテル…

リンチ『エスノメソドロジーと科学実践の社会学』コメント6

2 会話分析について(続々)3.会話分析への疑問リンチが会話分析に対して言いたいのは、「固有妥当性要請を無視して、‘科学的活動の'日常的基礎を記述できるはずはなかろう」ということなのだと思う。リンチの語る固有妥当性要求の主張は、会話分析のオーソド…

リンチ『エスノメソドロジーと科学実践の社会学』コメント5

2 会話分析について(続) 2;固有妥当性要請 このリンチの論点は結局のところ、会話分析においては、記述/説明は対象となる実践と内的関係にあるということの把握が甘い、簡単に言えば、ガーフィンケルが言っていた「固有妥当性要請」が欠けている、と言い換え…

リンチ『エスノメソドロジーと科学実践の社会学』コメント4

2 会話分析について 1;基本的確認 リンチの会話分析批判ははっきり言ってよく分からない。最初の内は、会話分析の全面的批判のように威勢よく始まりながら、だんだんトーンダウンしていって、結局次のような記述を読む羽目になる。 p297 エスノメソドロジー…

リンチ『エスノメソドロジーと科学実践の社会学』コメント3

1 シュッツ、あるいはプロトEMについて(続々) 3;認知主義 では、シュッツはいかに間違えたのか?(いかにその教えは覆されたのか?)リンチが見るところ、それは、彼がカウフマンに由来する認知主義的な(表象主義的な、解釈主義的な)科学観を持っていたから。…

リンチ『エスノメソドロジーと科学実践の社会学』コメント2

1 シュッツ、あるいはプロトEMについて(続) 2;シュッツとプロトEM本書中盤の構成は;4章でプロトEM論(=シュッツ論)を、デリダのディコンストラクションの発想をベースに展開。で、ディコンストラクション以後どうするか?という問題に、5章でウィトゲンシュタ…

リンチ『エスノメソドロジーと科学実践の社会学』コメント1

(以下、札幌で言ったことの大雑把なまとめ。)1 シュッツ、あるいはプロトEMについて 1;基本的確認 リンチは非懐疑主義的ウィトゲンシュタインとの連携で有名だが、この本の中で改めて気になったのはポスト構造主義、特にデリダに対するそのシンパシーの表明…

スミスby上谷

ドロシー・スミスについてはほとんど知識がない。しかし、上谷が語るスミスに関する説明を聞いて、色々と思うところがあった。スミスが語るそのポリシー、特に上谷がスミスを敷衍して語る「制度」に関する説明(「activate」に関する議論)は、解釈主義的議…

<EM vs 哲学>

M.リンチ「コンテクストのなかの沈黙」――表題のテーマを掲げる「カテゴリー対で発言が組織された」ある研究会での議論を聞いていて真っ先に思い浮かんだのがこれ。(ブレイクで隣に座っていたIさんにこのことを言ったら同意して下さったので、この直観はそう…

je me console

D'une façon générale, l'Histoire de la Folie faisait une part beaucoup trop considérable, et d'ailleurs bien énigmatique, à ce qui s'y trouvait désigné comme une « expériences, montrant par là combien on demeurait proche d'admettre un suje…

喜多加美代「触法精神障害者の「責任」と「裁判を受ける権利」」

『概念分析の社会学』中、私の一番のfavorite論文。フーコーの以下の言葉を見て、この論文をふと思い出した。 ひとつの言説の一般的な根拠と、その言説の歴史的同一性の全体的形式を、理論的選択のなかに探そうとするのは不十分である。というのも、同一の選…

飛蚊症・ライル・サッカー

9月下旬に網膜裂孔+飛蚊症となり、10月初旬にレーザー固定手術。レーザーで網膜の穴をかがって網膜の穴が広がる心配はないらしいが、飛蚊症自体はこれで直るわけではない。一生このまま、後は慣れるしかない。数年前に右目が同じ症状になったが、今回は左目…

ノーグレン,ティアナ『中絶と避妊の政治学 戦後日本のリプロダクション政策』

岩本監訳、塚原、日比野、猪瀬訳 青木出版、2008年最近翻訳が続いている、流行の(?)アメリカのジャパン・スタディーズの翻訳。<国家vs社会の二元論(国家の抑圧的政策に抵抗する民間)>を排して、<多元主義(国家アクター、諸民間アクター間の闘争から産出さ…

西阪仰・高木智世・川島理恵『女性医療の会話分析』

文化書房博文社、2008年同年出版の西阪単著である『分散する身体』もそうだが、数年前の私のつぶやきhttp://d.hatena.ne.jp/Zephyrus/20060806/1154925010がまるで聞こえたかのように、会話分析ジャーゴンを一切使用しない。それどころか、これまた過去の私…

荻野美穂『「家族計画」への道――近代日本の生殖をめぐる政治』

岩波書店、2008年明治期から1980年代までの生殖(中絶、避妊)の「言説」の歴史を追うというのは個人的関心と重なり、熟読した。内容的には、前半(4章まで)、産児調節運動をめぐる運動内部の錯綜した事情(内部分裂p052)、後半、優生保護法をめぐる法と(複数の)…

ケブルス+フード編著『ヒト遺伝子の聖杯』

石浦章一+丸山敬訳、アグネ承風社、1997年随分前読んでいたが訳がどうしようもないので、かつ信じがたいことに脚注を訳出していないので、原著を手に入れ気になる章を再読。やはり個人的には、遺伝学の展開、ヒトゲノム計画が「(ヒトの)正常」という概念を曖…

アリス・ウェクスラー『ウェクスラー家の選択』

武藤香織・額賀淑郎訳、新潮社、2003年奇蹟の本。著者自身と妹(ナンシー・ウェクスラー)がハンチントン病患者の母親を持ち(2人とも)50%の確率でハンチントン病に罹患するする可能性のある者であること。父親が精神医学者でありアメリカのハンチントン病患者…

少子化対策

少子化対策を論ずる論文を読んでいると、驚かされる文章に時々出くわす。例えば、最近読んだ論文には次のような一節があった。 同棲や結婚外出産が少子化を生むという理論的根拠もない。同棲でも長期のいわゆる事実婚なら子供を産んで家族を形成する傾向は大…

経過報告4

N氏が言っていた最終文の「上品さ」について考えている。確かに我ながら淡泊だと思う。この最終文を含む最終節はもうすでに言った重要点を念押しをするためのものではなく、基本的に論文全体の流れを調整するために書いている。「優生学って単純に生物学的還…

N氏

N氏と電話で現在執筆中の論文について最終調整する。1 形式に関しては(枚数(分量)に関して)「一行でも減らしてもらえると・・・」とN氏。「鋭意努力します。でも、大幅には減らせないと思います。申し訳ありません」と私。他に言葉がない。すみません。2 …

経過報告3

原稿を修正していると、修正どころかますます改悪しているのではないかと不安になるときがある。読みやすくするつもりでかえって読みづらくしてないか?、って。コメントで焦点の一つとなっていた、優生学的言説を無知と欺瞞へ還元‘しない’という行き方をい…

科学的言説の分析について

労多くして益少なし。これに尽きる。1 専門分野内での常識的推論を駆使できないと、専門家が何をしているかは到底理解できない。そこで、その分野の専門知識を大量に仕入れねばならない。まずこれがとてつもなく大変。 恐らく、今回の論文で永井のテクストの…

経過報告2

12月初旬の研究会において、私の報告に対して研究会員より疑問の形で問題点をご指摘頂きました。私はその時点ではそれら問題が比較的簡単にクリアできるものと思っていました。ですが、その後の一月でこれが容易ではないことが判明し、アイデアの大幅な修正…

経過報告1

先週金曜日やっと講義が終わり、集中読書中。まだ読まねばならない文献がたくさんある状態、というか、読むと、読んだ文献の4倍位読まねばならない文献が現れてきて、手に負えない状態…。12月頭に報告した際の見込みが非常に甘いものだったことを痛感させら…

概念分析

概念分析の実行は、何かあるビジョンを持ちそれに向けて思考を組織してゆく作業というよりも、むしろ、すでに存在する多種多様な欠陥のある分析手法、方法論を反面教師に、「こう考えてはならない」という具合に思考を組織してゆく作業であるような気がする…

「実践」ということば

よく学生に聞かれ答えに窮する質問;「実践」って何ですか?一応「自然言語の記述を問う水準において一切の人間活動に言及することば」などと答えるが、しっくりしない。というか、肝心のことが説明されていない。この説明しきれない感じ、これは何だろう。…

クレーリー『観察者の系譜』

97年初版の旧版は私が読もうとしたときはすでに絶版で、コピーするしかなかった。一昨年出版社を変えて新版が出ていたことをつい最近知り購入した。本文よりも訳者遠藤知巳が初版翻訳からほぼ10年を経て2005年9月に書いた「あとがき」が興味深かった。遠藤知…

EMのポリシー(続)

某大学某授業にて、記述を与えることとはどういうことか?を例に簡単にEM的分析をデモンストレートしてみた。一言も難解なジャーゴンを用いず、日常的な言葉遣いでこれ以上分かりやすいものはないだろうという水準で自分としては話したつもりだったので、自…